なぜマンモスがワシントン条約に?日本も部外者ではないその理由とは

なぜマンモスがワシントン条約に?日本も部外者ではないその理由とは

今回取り上げるのはこちらのニュース。

8月17日からスイス、ジュネーブで開催されているワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の締約国会議で、驚くべき提案がなされている。マンモスを規制対象リストに加えようというのだ。

出典:絶滅したマンモスを「絶滅危惧」リストに?なぜ?-ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 

すでに紹介したように、今回ジュネーブで行われたワシントン条約会議では、カワウソの国際取引が実質禁止になったことも記憶に新しいですよね。

そして同会議では、なんと絶滅したはずのケナガマンモスを附属書に記載しようという提案があったのです。

本来は「野生動植物の個体数を守るため」のワシントン条約ですが、なぜ個体数がゼロになった絶滅種を対象にしようとしているのでしょうか。

実は、その裏には無視できない実情と、日本も他人事ではない事情があったのです。

 

 

ケナガマンモスとは?

ケナガマンモス 画像

ケナガマンモスは約4000年前まで北半球に広く生息していた哺乳類です。

2019年には東京でマンモス展も行われ、再び注目を集めていますね。

ちなみにマンモスを絶滅させたのは人間か気候変動かはまだわかっていません。

 

牙が高値で取引されている

ケナガマンモスは4000年も昔に絶滅した動物ですが、現代社会でもその死骸が有効活用されています。

マンモスの生息地だった一部の地域は永久凍土に覆われていて、マンモスの死骸がほぼそのままの形で今も残されているのです。

なかでも立派な牙は人気で、高値で取引されています。

ちなみに主な輸出国はロシア。

 

 

マンモスの牙が象牙密輸の隠れ蓑に

アフリカゾウ 自然 画像

絶滅した動物の死骸は今後増えることはなく、消費するのはもったいないように思えますが、今回ワシントン条約を適用しようという働きはそういった観点ではありません。

ある意味目から鱗の作戦なのですが、守ろうとしているのは、なんと現存する野生動物のアフリカゾウでした。

象牙はご存じの通り高値で取引されているので、アフリカではアフリカゾウの惨殺と、象牙の密輸が後を絶ちません。

あえて「惨殺」と言ったのは惨殺としか形容できないからで、アフリカゾウを機関銃で撃ち殺す、もしくは瀕死にした後、上顎ごとチェーンソーなどで切り取り持ち去るからです。

あまりに悲惨なので画像は添付しませんが、こちらのニュースから実際の写真が確認できます。

象牙、国内販売の禁止提案 「密猟招く」日本を批判-読んで見フォト-産経フォト

しかしアフリカゾウの象牙はすでにワシントン条約で規制されているため、簡単に取引することはできません。

そこで密輸ブローカーが考えたのが、規制のかかっていないケナガマンモスの牙に紛れ込ませて流通させることでした。

ケナガマンモスの牙とアフリカゾウの象牙は見分けが付きにくいので、ケナガマンモスの牙として正規の方法で輸出してしまうのです。

つまりケナガマンモスだろうとアフリカゾウだろうと、ワシントン条約で象牙自体の輸出を制限することでアフリカゾウの密猟を抑制しようという作戦です。

遠回りですが効果的な方法ですよね。

 

最大の輸出先は東アジア 日本にも

問題となる象牙の輸出先ですが、その大半が東アジア。

特に日本への輸出数が多いです。

象牙なんかそう簡単にお目にかかるように思えないかもしれませんが、大半の日とは象牙に何気なく触れているかと思います。

 

印鑑の材料として人気が高い

象牙は、装飾品や漢方薬にも使われるそうですが、それは一部に過ぎません。

日本に輸出される象牙が最終的になにになるかというと、社会人の基本装備のひとつ「印鑑」です。

世界的に見ても日本ほど印鑑に頼っている国はなく、最近では100円ショップでも扱われるほどお馴染みですね。

そして印鑑の材料として最上級と言われているのが象牙です。

見た目の美しさはもちろん、インクの付きがよく捺印しやすいことから、現代でも重宝しています。

つまり日本人がただ印を付けるためだけに、希少な野性動物の命が奪われているというわけです。

 

日本は象牙の取引規制に反対

ワシントン条約会議の議題のひとつに、象牙の取引をさらに厳格にしようという動きもありました。

しかし、同会議に参加した日本政府はその採決に反対しています。

今回の会議では、委員会で国内市場の完全閉鎖が提案されたが、比較的個体数の多いアフリカ南部の国や日本は「取引で得た収益を種の保護にあて、持続可能な資源管理を進めるべきだ」として反対を表明。

前線で対応するアフリカ諸国が、すでに正規のルートで流通している象牙をアフリカゾウ保護のための資金にするという意見はわかります(自然死の固体から採取した象牙は輸出可能)し、南アフリカの一部の地域では増えすぎて害獣化しているアフリカゾウを何とか資源として利用したいという意図も見え隠れします。

時事解説:アフリカゾウによる農作物被害とその対策――農民による命がけの追い払い――

現に日本で密輸された象牙が見つかっている現状を認知していながら、明確な規制方法を提示できていないのが現状です。

 象牙の報告は来年の常設委員会が期限。日本は「国内市場は厳格に管理されており違法取引や密猟とは無関係」との立場だ。一方、既に国内市場を閉鎖した中国で、日本からの密輸が相次ぎ摘発されている。

出典:象牙取引、日本に防止策報告要求 ワシントン条約会議閉幕-中日新聞

もちろん印鑑業界に忖度したというのはあくまで予測に過ぎないですが、カワウソの個体数減少の原因と名指しされていながら、カワウソの国際取引を禁止する採決に反対票を投じた次点で、筆者は日本政府の野生動植物保護の対応を毛ほども信用できません。

 

 

規制の是非は

ただしこのケナガマンモスにワシントン条約を適用するのは一筋縄では行きません。

もちろん意地悪しているわけではなく、ワシントン条約の根幹的な問題があります。

 

ワシントン条約は「絶滅させないため」の条約

そもそもワシントン条約とは、「野生動植物の個体数減少を防ぐため、野生動植物の国際取引を規制する目的」の条約です。

つまり現存する野生動植物のためだとしても、すでに存在しない絶滅種に適用するようなルールになっていないいうわけです。

ワシントン条約の言わば規制のランクを決める「附属書」には3つのランクがありますが、どれも個体数と乱獲の現状を加味した上で分類するように作られているわけです。

 

附属書もう一個作れば?

しかしそんな理屈があったとしても、ケナガマンモスの牙を規制対象にすれば、現存するアフリカゾウの保護に効果的なのは間違いありません。

今回は象牙を資源利用したい日本を含めた各国の意図と、正規流通する象牙をゾウの保護の資金になっている側面をどうするかが焦点になるので、実質的には絶滅種にワシントン条約を適用するかどうかは二の次になっているのではと思います。

今後同様の問題が出る可能性を加味した場合、アニシルとしては、もういっそ附属書をもうひとつ作ればいいんじゃないの?と思うわけです。

ケナガマンモスも絶滅しただけで野生動物には代わりないですし、附属書Ⅱと附属書Ⅰには毛皮や牙などを含めた規制をする意図もあるわけです。

なら現存する種類でなければいけない概念だけなくして、附属書Ⅰと同じ規制レベルの附属書を作ればいいのではないでしょうか。

ルール上の問題はなにもなくなるよね、という屁理屈です。

 

 

まとめ

今回のマンモス規制の裏には、現存するアフリカゾウの保護という大義があったわけです。

そしてその規制に踏み切る原因になった当事国の日本は、いまだに象牙の規制に反対している体たらくです。

政府批判はなるべく避けるサイトにしたいのですが、一言だけ「愚かだ」ということは言っておきたいです。

みなさんも、今後象牙の印鑑に触ったときには、それが元々生きていて雄大な自然を歩いていたことを思い出していただければと思います。

 

 

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