カワウソ保護を決定した「ワシントン条約」とは?その役割や逮捕事例は?

カワウソ保護を決定した「ワシントン条約」とは?その役割や逮捕事例は?

先日大々的に取り上げられた、ビロードカワウソとコツメカワウソの国際取引禁止。

当サイトでもどういった意味合いがあり、どういった効力があるのかは簡単に説明しました。

そのなかで軽く触れた「ワシントン条約」

一度は名前を聞いたことがあると思いますが、その実どういう取り組みで、どういうルールがあるのかはあまり知られていませんよね。

おそらく当サイトでも今後何度も取り上げることになるかと思いますので、このタイミングでしっかりかつわかりやすく解説していこうと思います。

飼育できる動物が少なくなる以外にも、実は一般人もよく注意しなければいけない影響があるのです。

 

 

そもそもワシントン条約とは?

ワシントン条約は、条約を採択した土地の名前からとった愛称のようなもので、

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」

が正式名です。

一目でなにを禁止する条約かわかりますが、なんとか深く掘り下げて解説して行こうと思います。

ちなみに「CITES(サイテス)」とも呼ばれていて、国際的にはこちらのほうが一般的でしょう。

英語での正式名称

Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」

の頭文字を取っているというわけです。

ゾウを模したロゴマークがかわいいですね。

 

180カ国以上が加盟

条約が発効された1973年(施行1975年)の次点では、この条約に賛同したのは80カ国程度でしたが、現在は183の国と地域が加盟(182の国と地域+EU)しています。

ちなみに日本は1980年に合意し、以後ワシントン条約に基づいて法を施行しています。

1992年に京都でワシントン条約会議が行われたのを覚えている方もいるかもしれませんね。

 

 

ワシントン条約は何のため?

ではそんなワシントン条約は、どういった目的で取り決められている法律なのでしょうか。

実は動物愛護というような感情的な目的ではなく、結構現実的な目的で取り決められている条約なのです。

 

野生動植物の過度な商業利用を制限するため

ワシントン条約の正式名「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」からもわかるとおり、本質は個体数の減っている動物や植物を、乱獲などによって絶滅させないための予防策のひとつとして取り決められている条約です。

すべての動物を対象にしておらず、野生の動植物を条件に、主に人間が資源として利用している場合に議題に上がります。

そして、起案は主に対象となる動植物が生息する国が主導することが多いです。

しかし、その動植物を利用したいと考える各国の思惑が交錯するので、一筋縄ではいかないのが現状です。

 

剥製や毛皮も対象に

保護対象になると、生死に関わらず対象となっている動植物の国際取引が制限されます。

つまり羽毛や毛皮、牙や剥製といった装飾品類や、食肉加工されたものも対象になります。

日本で言えば象牙の取引が問題になっており、密猟によって生産されたと思われるアフリカゾウの象牙が国内に持ち込まれています。

 

商業利用を否定しているわけではない

厳密に議論して保護するか否かを決定しなければいけない要因として、野生動植物を資源として利用しなければいけない国があることです。

必要かどうかは別としても、そもそも人間もほかの生き物を利用しなければ生きられない生き物です。

そしてワシントン条約も、野生動植物の商業利用を否定するわけではありません。

場合によっては、資源としての野生動物を保護する意味合いもあるほどです。

あくまで過剰な商業利用を防ぐのが目的で、個体数に影響のない範囲で利用しているのであればとくに制限されていません。

 

 

どんな取り組みがあるの?

では、実際ワシントン条約はどのようにして野生動植物を守っているのでしょうか。

 

保護レベルには3ランクある

ワシントン条約が指定する保護レベルには3段階あり、対象の野生動植物の個体数と利用状況によって決められます。

附属書と呼ばれるリストに入れることで、保護するよう加盟国に働きかける仕組みです。

 

附属書Ⅲ

保護レベルとしては一番低く、絶滅の危機に瀕してはいないものの、乱獲による局地的な個体群減少が見られる種などが対象になります。

商業取引は可能ですが、国際流通させる場合、輸出国が発行した輸出許可書や原産地証明書の添付が必要になります。

対象になる代表的な動物
オコジョ
ハナガメ
セイウチ
ワニガメ 等

 

附属書Ⅱ

主に、現在は絶滅の恐れはないものの、このままの状態で国際的に商業利用利用し続けると絶滅の恐れがある場合に対象になります。

商業取引は可能ですが、生体や毛皮などの加工品を国際流通させる場合、輸出国が発行した輸出許可書が必要になります。

対象になる代表的な動物
アフリカゾウ
イヌワシ
オオカミ
カバ
クマ
シロサイ
スッポンモドキ 等

 

附属書I

規制レベルとしては一番高く、現状絶滅の危険がある種で、主に国際的な商業利用がその原因になっている場合に適用されます。

商業取引は原則禁止で、生体や加工品を国際流通させる場合、学術研究を目的とした場合のみ輸出国・輸入国両方の許可書があれば取引可能です。

対象になる代表的な動物
カワウソ(ビロードカワウソ・コツメカワウソ)
アオウミガメ
オジロワシ
コウノトリ
ジャガー
ジュゴン
ダチョウ
チーター
チンチラ
ツキノワグマ

 

 

ワシントン条約に罰則はない!?

裁判 イメージ 画像

動物に詳しくない人に言うと驚かれるんですが、実はワシントン条約自体に罰則規定はないんです。

ではなぜ象牙の取引やセンザンコウの剥製の取引などで逮捕される人がいるのでしょうか。

 

加盟各国が独自に取り決める

野生動物保護への取り組みは国ごとに違い、世界的な価値観では到底計れるものではありません。

このためワシントン条約で「象牙を密輸したら何年の懲役」というようなルールがあるわけではないのです。

つまり、ワシントン条約に同意している国々が独自にルールを取り決め、法律で罰則を決めています。

日本においては「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」がそれに当たり、国外に許可のない生体や加工品を持ち込むと罰せられます。(密輸など場合によっては関税法なども適用される)

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律のひとつに、海外の野生動物を保護する条項があり、それがワシントン条約の附属書をもとに規制対象を取り決めているというわけです。

 

日本での逮捕事例

では実際の日本での逮捕事例をいくつかピックアップします。

希少サル5匹密輸未遂 成田空港、鳴き声で発覚 男1人起訴

取引規制のカメ、クルーズ船利用し密輸疑い 沖縄で中国籍2人逮捕

手荷物にカメ60匹 「密輸中継地」で日本人に実刑判決

コツメカワウソ密輸容疑で男ら逮捕 人気高まり転売横行

密輸のサル、新種の可能性=成田空港で摘発

絶滅危惧種「センザンコウ」をメルカリに出品 男女を書類送検

「かわいそう」と思い… カワウソ10匹密輸疑いで日本の女子大生をタイで拘束

確信犯としか思えない事件がほとんどですが、ちょっと間の抜けた事件もありますね。

密輸されたサルの種類が特定できず新種の可能性まであるという事件では、密猟の現場では種類どうこうより「売れそうならすべて捕まえてしまえ」という乱雑さも伺えます。

センザンコウの剥製をメルカリに出品する事件に関しては、国際取引を規制するワシントン条約の意図から擦れば関係ないように思いますが、日本の種の保存法では国内の流通にも許可が必要になり、センザンコウの剥製は昔はよく流通していたので、センザンコウの個人取引で摘発される例は意外に多いです。

女子大生がカワウソを密輸しようとした事件の全容はあまり報道されていませんが、あまりに安かったので自分で飼育しようとした可能性も否定できません。

 

実際の罰則に関してはかなり細かく決められていて、私では手に負えなかったので以下の報告書を参照してください。

罰則や違反事例等 – 環境省(PDF)

 

旅行先でも要注意!

ワシントン条約は、こういった剥製など美術品や、ペット目的での生体の輸入がほとんどですが、実は一般人でもよく注意しなければなりません。

とくに注意しなければいけないのが旅行で、旅行先でワシントン条約の対象になる土産物などを購入し、国内に持ち込むと逮捕されてしまう可能性もあるのです。

たとえばアフリカの一部の地域では、アフリカゾウの毛がお守りとされていて、ゾウを保護するレンジャーが持ち歩くこともあります。

それが密猟で得たものでなくても、国内へ持ち込む場合許可が必要になります。

ピラルクのウロコやクジャクの羽なども同様ですが、当然のように土産物として販売されています。

かばんに入ってしまう小物などは気にせず持ち込んでしまう場合もありそうですよね。

 

 

まとめ

このように、ワシントン条約の原則は国際取引を対象にしていて、国内ではあくまで日本の法律が適用されるということがお分かりいただけたかと思います。

野生動物の命を守るという条約でないことに少しショックを受けた方もいるかもしれませんね。

しかし人間の生活を守るために動物の命を奪ったり、その骨肉を利用しなければいけない以上、必要な取り組みです。

密輸以外にも加工品も対象になることがあり、海外旅行でも注意する必要があります。

ワシントン条約は思っている以上に身近な存在だと認識し、もし興味があれば人間の都合で絶滅の危機に瀕している野生動物にも思いをはせてみてくださいね。

 

 

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