動物行動学に興味を持ったら呼んでほしい一冊
『LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方』
動物好きが動物の本の感想を書いていく一人語りシリーズ。
今回紹介する「LIFE<ライフ> 人間の知らない生き方」は、テレビでも活躍する究極の動物好き 篠原かをりさんと、「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」などの麻生羽呂先生による、動物たちの生き方を柔らかく、どこかコミカルに書いたビジネス書です。
ビジネス書と考えるとやや薄いのは否めませんが、この本なかなか面白い。
動物の生態を柔らかく面白く表現している
本のジャンルとしては仕方ないのですが、これをビジネス書としてしまうのが非常にもったいない。
この本の魅力は、なんといっても動物の生態を誰にでもわかりやすく、かつ食いつきやすい話題から切り開いていることでしょう。
全編にわたって、紹介される動物たちの生態を人間社会と照らし合わせて「動物に学んで生きてみよう」という柔らかな提案で進められています。
実際、動物の行動に照らし合わせた人間の生き方自体に新しい発見があるとは言いがたいのですが、紹介される動物たちの本質を知ることができ、読みやすい語り口ですらすらと読み進めることができます。
動物を好きな人が、「かわいい」「かっこいい」から一歩踏み出して、その動物の生態や生き方について興味を持つきっかけになりうる本なのではないでしょうか。
漠然と動物を好きな人が、一人でも多くこの本を最初に手にとってくれることを願っています。
豆知識が面白い
各動物の紹介をした後、メモと言う形で豆知識が記されているんですが、これがなかなか面白い。
たとえば、
パンダを日本に最初に紹介したのは黒柳哲子
ぜんぜん知らなくて調べたんですが、黒柳哲子さんはパンダ好きが高じた結果パンダの研究を始め、現在「日本パンダ保護協会名誉会長」で、一大ブームとなった上野動物園のランランとカンカンの導入にも尽力していたとか。
トットちゃんすげえ。
ネコ好きのエジプト軍に対抗するため、ペルシャ軍がネコの付いた盾を用いたところ、圧勝した
結構有名な話ではありますが、実際には好きどころか女神バステトの化身として崇めていたため、盾にネコを括りつけて攻め入ったところ、ネコを傷付けることができず敗北したと言うお話。
ペルシャ軍も冗談半分だったとは思いますがまさかの大成功。やっぱりペルシャネコだったのかしら。
労働時間は繁忙期で1日6時間。なかなかホワイト。
ミツバチの働き蜂のお話。
ちなみにスズメバチは1日100km移動することもあるので、なかなかブラック。
紹介されている各動物にそれぞれこんな豆知識が記されています。
ほんとに!?と思うこともあるので、読みながら調べてみるのも面白いかも?
漫画がカワイイ
各動物の生態と人間の生活を照らし合わせて、各章の冒頭に漫画で簡単な解説がされています。
この漫画がなかなかかわいくて、コミカルに描かれていてとても面白い。
擬人化しすぎず、かつポップに感情を表現させているのがいいですね。
お気に入りは「ハダカデバネズミ」の漫画ですが、気になる方はぜひ本編で。
ちなみにリアルなイラストもあるのですが、なんだかとってもワイルド。
私に突き刺さったダーウィンの言葉
この本はダーウィンの言葉で始まります。
恥ずかしながら、動物好きを自称しながらこの言葉をこの本ではじめて知り、深く心に突き刺さりました。
酒で酔いつぶれたサルは、もう二度と酒には手を出さないだろう。つまり、人間よりよっぽど賢いのである。
-チャールズ・ダーウィン-
普通に考えればこの本における「人間の生き方を動物に学ぶ」という趣旨の上で、動物が賢いことを脳裏においてもらうために引用したのだと思いますが、この一節が私の価値観を肯定してくれました。
私はせっかく巨大な脳みそを持ちながらそれを善良に使えない人間が苦手で、それが動物が好きなことにも繋がっているんだろうと思っています。
人間は学習と予想を根幹にして生きている癖に、その場の感情や直感で行動しまわりに迷惑をかけたり犯罪に走るなら、自分の持っている能力を最大限発揮して必死に生きている動物のほうがよっぽど偉くて賢いではないかと思っているからです。
その価値観を持った人間がこの言葉に触れたとき、「やっぱり動物のほうが賢いよね」と強く肯定された気になって、一瞬でこの本への興味が深まりました。
まとめ
すでに動物マニアな人が読んでしまうと知ってたことが大半を占めていたのですが、それでも読みすすめてしまう表現力と構成です。
テレビで見た篠原かをりさんの印象だと、もっとマニアックでドロドロした知識も持っているはずですが、終始読みやすく、生き物に興味を持ってもらえる内容に徹しています。
差し込んでいる漫画も秀逸で、この漫画だけでも1冊作って欲しいぐらい。
動物好きな人へのプレゼントとしても外さないでしょうし、生き物好きの中高生も漫画から入って興味を持てるのではと思います。小学生にはちょっと早いかも?
ちなみに同じ著者タッグで「サバイブ(SURVIVE)――強くなければ、生き残れない」という実質的な続編もあるので、次回はそちらを紹介しようと思います。
今回紹介した作品は、2019年8月現在AmazonプライムのPrime Readingの対象になっています。