私は人間も含めたすべての生き物の中で最も敬愛する生き物が犬です。
ビジネスで付き合う人間を信用できるかどうかを図るためにも、その人が犬とどう接するかを参考にするほどです。
所詮生物学を生業にはしていないアマチュアではありますが、犬の行動学の研究は私のライフワークといっても過言ではありません。
そんな私から見れば、専門書を自称する書籍やサイトの大半が稚拙でおろかに見えて仕方ありません。
このページでは、本気で犬を家族に迎えたいという方のために、本当に大切なことをなるべくわかりやすくかつやさしく解説していこうと思います。
犬は「飼うな」
もちろん、犬を迎えようとすること自体を否定するわけではありません。
アレルギーなどどうしてもできない場合を除けば、人間全員が犬を迎え入れるべきだとすら思います。
飼い方という見出しにしておいてなんなのですが、私は犬に対して「飼う」という言葉が使われるのが嫌いです。
飼うには養うという意味があるのですが、ほとんどの犬はただ養われることを嫌うからです。
犬は長い時間人間と暮らしてきましたが、その動機は飼われることではなく、共存することで成り立ってきました。
ほとんどの犬は人間に仕事をもらい、達成することで人間に利益を与え、その利益で得た報酬を分けてもらうことで生きる共存の形が自然なのです。
つまりただ養われることは、犬からすれば違和感のあることなのです。
しかし現代社会、とくに日本において、犬と共存するのはとても難しいことです。
外で稼いできたお金で犬の食料を買い、ただ与えるだけで成り立っている一方通行の関係です。
最低限、犬が「群れの中で共存している」と思わせることが出来るか否かで、犬が問題行動を起こすか否かが決まるといっても過言ではありません。
犬種によって犬の仕事は変わるので、共存していると思いやすい犬種、思いにくい犬種がいることは覚えておきましょう。
「可愛い」で選ぶべからず
SNSを中心とした映え文化が示すように、見た目は人間の購買意欲を大きく左右しますよね。
犬を選ぶときも、多くの方が「可愛い」「かっこいい」という外見から得た感情で選ぶことが多いでしょう。そして失敗します。
私自身、いまの愛犬を選んだのは、売れ残ってしまいこのままブリーダーに返してしまうとどうなってしまうかわからない、「可哀想」という感情からでした。
もちろん、保護犬や収容犬を迎え入れるときなどは選択の幅自体が狭いですし、殺処分させないという目的を前提に選ぶことを否定しません。
ただし、選択肢があるのだとすれば、感情に流されて犬を選ぶことは大きな間違いの始まりにもなりえます。
先述したとおり、犬は人間に仕事を与えられる存在で、その上で品種改良されて現在の形態になっています。
それは外見だけでなく精神面にも影響があり、あなたと付き合いやすいかどうかに大きく影響するからです。
私の愛犬は、ペットのハツカネズミに強い執着心を持ちます。
長らくなぜだか疑問だったのですが、調べてみると愛犬の父親であるヨークシャーテリアがネズミを捕るための犬種だったからで、ミックスになっても、誰も教えていなくてもその本能が刺激されていたようです。
ここまで顕著な例は珍しいかと思いますが、このDNAに刻み込まれた「本能」はどの犬種も持ち合わせていて、普段の行動にその一端が現れたり、トレーニングのしやすさが変わったりします。
犬をファッションとして考える人間には何を言っても馬の耳に念仏を唱えるよりも価値がないとは理解していますが、犬を本気で迎えたいと思い、ネットの海を漂ってこのページにたどり着いた心ある方には、外見的な可愛さよりも、相棒として迎え入れられる犬を選んでいただければと願っています。
可愛い、かっこいい、可哀想で迎え入れるなら、その犬に自分を合わせる覚悟を持ってください。
人間の生活は犬にとってストレスである
現代人は、巣を持ち、そこからバラバラに仕事へ行き、帰ってきて食事を摂ったり睡眠を取ったりするのが一般的です。
犬は家に留守番することが多くなりますが、これは犬にとってとてつもないストレスです。
犬の元になったオオカミは本来群れで生活する生き物で、それは狩りに出るときも同じです。
古来から「犬は人に付く」と言われますがそのとおりで、群れの仲間が居ればそこが巣になります。
つまり群れがバラバラになり、自分だけが取り残されるというのはとてつもない不安なのです。
もちろんその不安に対する犬の反応はそれぞれで、不安から群れを探すために鳴く場合もあれば、いずれ帰ってくることを自覚してあきらめる場合もあります。
私は、もはや留守している間の問題行動に関しては、多かれ少なかれ仕方ないものだと思っています。
犬の命に関係しないトラブルなら、帰ったときに足がフンまみれになっていようが、水を撒き散らしてフローリングのコーティングがふやけていようがイラつかず犬のお風呂や床の掃除から始めます。
これはほんの一例で、まだまだ犬の習性と人間の生活のすれ違いは多くあります。
もちろん犬のために家で仕事をしよう、もしくは犬を連れてできる仕事だけをしようなんて思える人間は、この国では数えるほどしかいないかと思いますので、現代社会と犬の習性のすれ違いによるストレスを理解し、ときに許容し、そのストレスを軽減できるようにしてあげる配慮をしてあげましょう。
群れの一員として扱おう
すでに触れたとおり、犬は自分を人間の群れの一員だと思って生活します。
一昔前まで、犬は群れの中のランキングを作り、自分が今何位か考えて行動していると言われてきましたが、これは間違いである可能性が非常に高いです。
私も長く犬と接してきた中で、犬はランキングのような人間的思考などは持っておらず、あくまでその人に対する対応を考えているに過ぎないと感じています。
犬からして一番の快楽が人間からの愛情なのであれば、その愛情をもらうために最善の行動をするだけです。
ランキングこそないものの、群れのなかでの強弱や信頼関係は認識します。
子供と犬が仲良くなれるのはこのためで、親は子供を守っているので群れの仲間であり、犬が子供を群れの中の弱い存在で、守るべき対象だと思うことで良好な関係を築くのではと私は考えています。
つまり、あなたが家族で犬を迎えようとしているのであれば、まずは人間同士で家族が群れとして機能していて、犬に対して家族で一貫した対応をしなければ問題行動を引き起こしやすくなる可能性があります。
しつけは犬を人間にするわけではない
しつけは、犬と暮らす中で必要なルールを覚えさせる作業です。
日本人にしつけが下手な人が多いのはこれを理解していないことに原因があり、犬に人間の都合のいいルールを押し付けようとするがために無理が出るのです。
犬はどうがんばっても犬です。
人間だって、仕事上の謎マナーなんて怒られることがなければ無視するでしょう。
人が居ればお利口にする犬が、人が居なくなった途端悪さをするのも、人間の押し付けた無理なルールを理解できないからこそ無視するのです。
どんなに利口な犬だとしても理解できることには限界があり、人間のように損得のないルールを覚えて従うことは出来ません。
逆に理解できるルールなら守るので、人が見ていなくても特定の場所で排泄をすることはできますよね。
犬が理解できないルールを守らせるのは無理なので、対処できる知能を持つ人間がそもそもできないように対処しなければなりません。
家の中に違う生き物が居ることを自覚し、環境を合わせることは必須です。
犬は最高のパートナー
最後にこれだけは覚えておいてほしいのが、犬はあなたの最高のパートナーになりえるということです。
人間は私利私欲の生き物です。どんな聖人でも「自分はこうだからこうする」という考えを捨てずには居られません。
他人のための行動というのも本質は「自分の価値観の中でそうしなければならない」という前提があり、情けは人のためならずという言葉からもそれを察することが出来ます。
一方、犬は人間と共に生活するために姿を変えた生き物で、本質的に人間のパートナーでありたい生き物です。
実際、私は恋人よりも家族よりも犬と居るときが一番幸せで、意思の疎通が容易に取れます。
もしそうならないとしたら、それはあなた自身の行動に問題があることにほかなりません。
犬は人間同士ができないレベルで人間の感情、行動をよく見て察しています。
もちろんそのままコピーするわけではありませんが、犬の一挙手一投足はあなたの緻密な写し鏡といってもいいでしょう。
もちろん犬にも自我はあるので、人間以外から受けた刺激によっても行動が変化します。
パートナーとして、それも受け止めて時に改善してあげることも、犬を迎え入れる人間の使命ではないかと思います。