非常に悲しい事件がありました。
徳島県の動物管理センターが、「唸る」という理由で保護団体への保護犬の引き取りを拒否し、殺処分したというのです。
ツイート主によればその犬は咬傷歴(人や犬を噛んで怪我をさせるなど)はなく、写真から見る限りこれといった攻撃性も見られません。
動物管理センター側の公式発表がないのであまり批判はできないのですが、「唸るから」といって保護したいという方(団体)がいるにも関わらず殺処分したのは早まった行為としか言えず、管轄する徳島県には県民に説明する責任があります。
ちなみに札幌市の動物管理センターでは、原則として問題行動があるのであれば、それを公表した上で受け入れられる方へ譲渡を行っています。
私の歴代の愛犬も、徳島県の基準に照らし合わせると殺処分の対象です。
5匹全員唸ります。
しかし噛む犬は一匹も居ません。
とはいえ、唸る犬が噛むことがあります。
ではそもそも唸るとはなんなのでしょうか。
今回は犬が「唸る」その理由と、対処法を考えてみましょう。
犬が唸る理由を考えよう
動物のしつけには、人間が理詰めで対応するのが大原則です。
なぜこうするのか、どうしたら思考を誘導できるのか、それを考えずに行うしつけは効果がなく、虐待にもつながります。
「犬が唸るなら攻撃性だろう」という思い込みは全時代的で、それを理由に殺処分するなんておろかとしか言いようがありません。
犬はもちろん、人間のしつけであっても「だろう」で判断するのは危険です。
誤解や感情をおしつければ、築いた信頼関係を一瞬で消し去ることもあります。
適切に状況を見極め、先入観を捨てて目の前の状況から判断しましょう。
これから紹介する例もあくまで一例で、その裏で犬がどう考えているか見極めるのはあなた次第です。
①自分のわがままを通そうとする
一番多いのが、自分の「わがまま」を通そうとする意味で唸る行為でしょう。
たとえばおもちゃ(だと思っているもの)を取られなくない、自分のスペースだと思っている場所を犯されたくない、シャンプーが嫌だ、単純に触られたくないなどなど、その要求が通らなくてもなんの問題もないのに固執している、簡単に言えばわがままを通そうとしているときです。
原因としては、過去に唸ったことで自分の欲求が通った成功体験があるのでしょう。
犬に必要な行動を無理に我慢させているのでなければ、これらはやめさせても問題ありません。
しっかりしつければすぐに改善するでしょう。
毅然な態度or成功体験でやめさせよう
その犬が、おもちゃを無理に取ろうとしたりしても攻撃性を見せない場合、新たな成功体験で改善してあげましょう。
具体的には、「放して」「ちょうだい」などと声をかけおもちゃに軽く触れるなどしながら、おもちゃを放したらほめる、おやつを与えるなど成功体させます。
場所を譲らない場合は「おいで」と呼んで動いたらおやつを与えるのも有効です。
犬のしつけは、成功体験で改善させられるなら、それが一番信頼関係を崩さず、かつスムーズに覚えてくれます。
もし噛もうとするなど触れることができない状態なら、あなたの態度だけでやめさせることもできます。
犬は人間の態度から状況を見極められるので、唸った瞬間に胸を張ってじっと睨み付け、犬が及び腰になったときにおもちゃを取り上げれば、「唸ったら本気で怒られそうだ」と学習してくれます。
攻撃性を見せる犬に対して怒鳴る、叩くなどは、自分のほうが強いと思っている犬の場合行動を助長させる可能性もあるのでご法度です。
激しい攻撃性を見せる場合は別な原因がある可能性が高いので、ここで語りきれるものではありません。
信頼できるドッグトレーナーに判断を仰ぎましょう。
②不安で仕方ない
たとえば触られそうになると唸ったり、知らない人に対して唸るのは不安の現われの可能性が高いです。
保護した犬の場合、人間や環境に対して恐怖心がある場合もあり、聞く分には徳島の殺処分された個体はこれに当たると思います。
恐怖心を抱いているのは、程度によっては心の病気とも言える状態なので、対処がとてもナイーブです。
これは犬からすれば正当な行為で、無駄に叱るなどすれば信頼関係をより傷つける可能性すらあります。
唸る行為が問題なのではなく、不要な恐怖心を抱いていることへ対処しましょう。
新たな成功体験or動物病院へ
たいてい、犬の恐怖心は人間の文化や行動が理解できないことが原因です。
よくあるのが、サイレンやインターホン、バイクの音などに過剰反応することですね。唸る以外にも吠えることもあるでしょう。
犬からすれば化け物が近寄ってくるも同じなので、意味不明なものが近くに居ると思えば、人間でも嫌なのは理解できるでしょう。
この場合も、成功体験で改善させることができます。
たとえばインターホンに反応して唸るなら、ご家族や友人に手伝ってもらってインターホンを鳴らし、そのタイミングでおやつを与えましょう。
このしつけでは、犬の反応の度合いに合わせておやつは嗜好性の高いものが有効になります。
あまり好きではないおやつの場合恐怖心が勝ってしまうので、うちで保護した犬の場合は最終的に牛肉のミニステーキにまで進みました。(財布が痛かったです)
音がした瞬間に過剰に反応してしまうようなら、インターホンを鳴らす直前におやつを待てさせるのも有効です。
保護した犬が人間になれない場合は、まずは時間をかけて自分が無害な人間だと伝えてみましょう。
ゲージの近くで座って近くで本を読むでもスマホをいじるでもいいでしょう。経験上下手に話しかけないほうが無難です。
それでも慣れない場合は牛ステーキの出番です。(アレルギーがあれば豚でも馬でも羊でもいいです)
うちの保護犬は手渡しはもちろん人が見ている場所では餌を口にしなかったので、私は一口噛んで自分の匂いをつけて与えましたが、犬があなたからおいしいものを貰えたと自覚できれば必ずしも必要ではないように思います。(私も食べたくなってより財布を圧迫しますしね)
もしどうしても改善しない場合、かなり深い心の傷がある場合もあります。
この場合はしつけで改善させるのは困難で、場合によっては投薬によって不安を和らげる必要があるので、犬の行動に詳しい動物病院へ行って相談してみましょう。
③体の不調が原因の唸り
普段はとてもおとなしくいい子なのに、特定の場所を触られるのを極端に嫌がり唸る場合、怪我をしていたり、その部位が病気になっている場合もあります。
これは言わずもがな即刻動物病院へ行って診察してもらってください。
もちろん健康で、単純にそこを触られたときに嫌な思いをして、不安がっている場合もあります。
その理由をつぶしこむためにも、まずは動物病院へ行きましょう。
もし怪我や病気でない場合に触られるのを避けるなら、無理に触る必要もありません。
爪きりなどでどうしても触らなければいけない場合は、これも成功体験と紐付けて改善してあげましょう。
おやつを待てさせて、その部位に触るなどしてから与えます。
それでもだめな場合や、ひどい攻撃性を見せる場合は信頼できるドッグトレーナーに相談してみましょう。
さいごに
最後にこれだけは心にとどめておいてほしいのが、このサイトを含め「ネットでこう書いてあったからこうだろう」という思い込みは絶対に止めることです。
犬の思考は人間が思っているより複雑で、犬種やあなたの元に来てくれる前の環境にも左右されるので、ネットはもちろん専門書ですら書き表せません。
そもそもネットの情報は何の知識もないアルバイトが書いている場合もあり、どこまでの専門家が書いているかわからないので、鵜呑みにするのは絶対に止めましょう。(仮に獣医師監修と書いてあっても、そもそも獣医師はしつけの専門家ではありません。)
あなたも「育児書でこう書いてあったからこう育てるわ」なんて短絡的なしつけで育てられたらいやでしょうし、自分にそれが合っているかなんてわかりませんよね。
ドッグトレーナーも良し悪しなのであまり無碍に勧めたくはないのですが、困ったら「信頼できる」ドッグトレーナーの元に連れて行って相談してみるのが最善なこともあります。
まずは愛犬の様子をよく観察し、可能ならノートに書き、しっかり知識をつけた上でそのデータから予想することが重要です。
必ずどういう状況で唸るのか、唸らないときはどういう状況なのか、よく観察し、時には専門家の手も借りて適切に対処してあげましょう。